書籍・雑誌

新春第2冊!「ナイチンゲールの沈黙」

この作品には3つのナイチンゲールが含まれている...


「ナイチンゲールの沈黙」(宝島社・海堂尊)

内容は...とある大学病院のボンクラ診療医田口が目の摘出を控えるガキ2人・美声の担当看護師・有名歌手&マネージャーの面倒を見...られないので、謎の役人白鳥が助けに。

白鳥のオタク能力によりガキの調教は進む。看護師は大忙しのままだが...まあしょうがない。有名歌手は田口の特別薬処方で少しマシに。そんな中、ガキの1人を巻き込んだ殺人事件が発生。警察から白鳥並みのキレ者&ボンクラ刑事が送られてくる...

「看護師=ナイチンゲール」

「血を吐いても歌う小鳥のような歌手=ナイチンゲール」

2つのナイチンゲールのフュージョン。この2つが融合するまでが描かれ、融合した時に物語は集結する。

刑事がキレ過ぎてて前作で素晴らしい活躍をした名探偵、白鳥の良さが消えたのが惜しい...というあたりが書評としての描きどころなのだけど、そんなのは誰でも描ける。

で、今回、ケロロ軍曹(らしきもの)口調のガキ、田口達は前回の波動砲どころかニュータイプまで一般名詞としてる。ああ、作者ガンダムチルドレンだったのね~!!

というコトで、これは福井晴敏の「終戦のローレライ」と同じく、ガンダムバカが描くニュータイプ話なのである。ミステリーではなくSF。シリーズなのに前作とは全然違うジャンル、でもスタンスは同じ...ガンダムバカすげ~ありえね~!!

というか、ガンダムが小説の1ジャンルになっちゃったのかもね、コレ。

まあ、ガンダムだけでなく、歌技ってトコはマクロスだし、ラストなんかまんまダーティペア。途中で千里眼なんてあだ名のキャラも出てくるもの...この人、フェイント前にオタクだけが解るヒント入れちゃうんだよね~サービス精神多すぎ。描いてて楽しそう(笑)

でも、ガンダム抜きでもちゃんと読める。キャラクターコントロールも白鳥は残念だが、それでもかなりのレベルだ。


さて、もう1つのナイチンゲールにそろそろ登場していただかなければならない。

最後のナイチンゲールは

「ガンダムのもう一人の主役、シャア・アズナブルが最後に載ったモビルスーツ=ナイチンゲール」

である。2つのナイチンゲールが融合した時、最後のナイチンゲールの意味も含んでしまう。それが真のラストである。最後に登場するあの男はシャアなのだもの。


あと、1作目からあだ名だけ出て姿を現さないシリーズのヒロインがいるのが...。3作目にドカンと出てくる準備は出来たので次こそはヒロインが出ますように。

まあ、ヒロインだでなく、3作目のネタについては今回オープンリーチのように晒しているのも凄いけど。ジャンルを変えてもシリーズの骨の「病院の中の生死」を描くコトには揺らぎがなかったので期待したい。

ともかく、正月にまとめ読みするに値するシリーズであった!!

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新春第1冊!「チーム・バチスタの栄光」

あけましておめでとうございます!
飲み屋のカウンターで年越しした俺であります...


「チーム・バチスタの栄光」(宝島社・海堂尊)

この本は、絶対面白いだろう、だろうから...と楽しみに取っておいた本。手術道具の並ぶ黄色い装丁は非常に素晴らしく、これはハズレじゃないなと確信させるほどの出来。そして、やはり面白い本だった。今年はツイてる気がするぞ~!

内容は...とある大学病院のボンクラ診療医田口が心臓バチスタ手術の精鋭部隊「チーム・バチスタ」の失敗急増加(もちろん心臓手術なので失敗=死亡である)の原因を解き明か...せないので、とんでもない応援、謎の役人白鳥を呼ばれ、かき回されるというものである。

で、この作者は小説家としてはキャラクターの設定がちょっとクドいが素晴らしく(一流マンガ家並。俺はコト、キャラクターを造るコトに関しては小説家よりもマンガ家のほうがはるかに上と思っている)、また造られたキャラクターをとても良く自由に・かつ統率させて走らせて気持ちがいい。

作者が現役医師というコトで、病院内のやりとりはしっかり描写されるが、専門用語についても解りやすく邪魔にならない説明が入るので読むリズムは狂わない。途中参加の白鳥はそれこそややこしい言葉で人を狼狽させるのが得意な嫌味な奴だが、これもキャラ立てが良い為に読むにコツはいるが苦にならない。

2006年の「このミステリーがすごい!」大賞作なのだけど、途中途中にあまりにもフェイントを使っているコトとラストの解決方法が専門的すぎるので全体的には謎解きという楽しみは薄い。まあ、個別のフェイントについては楽しめるけど、読者が推理しても無駄な話ではあるので「ミステリ」好きな人には合わないのかも。

しかし、白鳥というキャラクターはもうコレ、その立ち位置も振る舞いも全て名探偵なのである。「名探偵と刑事」という組み合わせを「名探偵と医師」にシフトしたのがツボの作品であり、探偵モノの王道の設定を借りてリズムに乗ったフェイントの妙技を魅せるこの作品はなすがままに楽しいのである。

去年の高校サッカーの野洲がフェイントによる「カッコイイ」サッカーで頂点を極めたように、時流で旬な作品なのかもしれない。波動砲なんて言葉を一般名詞としてつるっと使うあたりも今時なのか...というのは次回にまかせよう。


というコトで、次回はこの作家の2作目の秘密を小説読みがついてコレない角度から解き明かす!!

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'06第16冊「だから山谷はやめられねぇ」!

「だから山谷はやめられねえ」(塚田努:幻冬舎)


幻冬舎アウトロー大賞、大賞受賞作。就職の意味を考える大学生の作者がドヤ街に潜入し、「日雇労働者」として働いたノンフィクションである。

1日1500円のベットを借りて、公園で働き口を探す「山谷漂流編」、地下鉄工事の現場で働く「飯場漂流I~地下鉄編~」、冬山で砂防ダムの型ワク作る「飯場漂流II~冬山編~」の3部構成。

就職に迷い、「底辺に潜入してみた」ことから思った作者の感想については薄っぺらい部分はあるが、しかし、底辺の現場でちゃんと労働して書いているあたりは前回の「インチキ船医」からみれば遥かに志が高い。

そして、現場作業のアレコレについてはなかなか良く描かれていて、現場仕事を知らない人にはいい参考になるような気もしたり。(もちろん、職人的仕事じゃなく、ただの頭数として使われている仕事だけなので、浅いといえば浅いよね)

ただ、俺ってコレに出てきたような仕事もひとさらい実際やっていたりするから、どちらかというと「いつ会社辞めてもメシだきゃ食えるか~」という間違った感想を持ったりするのであった。つか、なんでもやらせるウチの会社よりはずいぶん日雇いのほうがマシというコトか(笑)

とにかく、作者がまともな職についているコトを祈る。(作家としてやっていけるかは次の作品からの問題であるし)

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'06第15冊「あやしい船医、南太平洋をゆく」!

「あやしい船医、南太平洋をゆく」(永井明:角川書店)

タイトルから大好きな「「野郎数人で閉ざされつつ行う冒険の、特にメシの話」が満載...と思ったが...

なんだか海の楽しさを思い出した作者が、医者時代のコネで水産庁の臨時職員となり、水産大学校の「耕洋丸」の船医となる。

中身のほうは、まともな航海誌とか、素晴らしい体験記といえるようなレベルのものではなく、船で飲みすぎた・陸(もちろん海外)の飲み屋で飲んだとか、同じようなヨッパライぶりをうわべだけ面白そうにダラダラ書きなぐっているだけ。

医者としての腕はもう無いので、ちょっとだけ友人の病院で練習...って、あなたの診られるのは人里離れた遠洋で戦う学生なのよ...という感じで、書いてある程腕が酷いとは思わないならこれが事実なら...水産大学校って独立行政法人だけど、水産庁の臨時職員ってコトはいくらかでも「税金」で行っているんだないの?まあ、遠洋につきあう医師なんてそうはいないのだろうけど、それにしても...酷い。

というコトで作者のスタンスも、内容も、構成もここ数年来で読んだ本としては最悪の一冊。装丁だけは良くて、完璧にダマされました。このへんは角川書店は凄いと思ったが、もちろん作者が凄いとはこれっぽっちも思いません。あとがきには言い訳がましい事も書いているが、あなたの「一歩踏み込んだ」ってのは世間の人が、気付いても通り過ぎた領域なのだ、バカにするな!

作者はもう無くなったとみたいですが、生きているうちに文句を並べたかった。帯に「こんなお気楽に生きてていいんだろうか、いいんですよ、きっと。」とか書いてあるが、内容がこんなレベルじゃふざけるなとしか思えないな。

ともかく、最悪の1冊を手にしてしまったことに後悔するばかりである...

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'06第10冊「夜は千の眼を持つ」!

「夜は千の眼を持つ」(上野顕太郎:エンターブレイン)

シュールで独特で、時にくどく、時に無茶なギャグマンガを描き続ける、マイナーメジャー作家の上野顕太郎。物事を斜めに見すぎてすれ違う人々が繰り広げる、その作風...凄すぎる。つか、もっとメジャーなもの描いて...欲しくもないか。このクドさはたまに補給しなきゃならないモノだし。北海道におけるガラナのような漫画なのだ。

この五百ページ近い、シュールギャグの玉手箱の中身についてはもう書かない。だって説明してもワカラン奴にはワカランし、ある種の選民思想でなりたっている作品でもあるから、これはもうしょうがない。ただ凄く面白いマンガなんだ、ホントは...


さて、問題なのはある白いページの1行と後書きである。いや、多分作者はそんな話は書いて欲しくないハズだ。

長くは書かない。前回の「東京タワー」で書いた

「書けない・描けない・描かない人もいるんだよ、誰よりも表現する力があるのにさ...」

とは上野顕太郎のコトである...

しかし、この「夜は千の眼を持つ」を手にする読者は(選ばれた民だけに)結構な割合でその事実を知っていて、で、「今日も読んでみるか、ヒマだからな」と上野顕太郎のキメ台詞を吐きながらページをめくり大笑いするのだ、号泣しながら。

ギャグマンガの単行本としては非常に厚く重い一冊。それは一冊にまとめられた時、さらに重い本となってしまった。でも、それをちゃんと計れる読み手が手にしてくれる幸せな本のハズなのだ。

なにせ上野顕太郎の読者はどんな時でも、最後にゃ「今日も読んでみるか、ヒマだからな」と言える人々のハズだから。

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'06第9冊「東京タワー」!

「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」 (リリー・フランキー:扶桑社)


できるだけ、ヒット本は避けようと思っていたけど、なにせ札幌圏から出られないので買って来た。(というか、5/3~5/5の3日間は毎日6000円を本屋に置いて来ているのだけど)

で、元々涙モロいから逆にあまりにも「お涙」なホンは卑怯だ。と思っているのだけど。やっぱり「卑怯」いや、そこそこ泣くのは泣くんだけど(笑)、でも逆にこちらもお約束の涙を流した感もする。

売れてるし、2006年の本屋大賞も取ったけど、文章としても卑怯。「オカンとのつながり」をサイドに展開しているんだけども、展開した風呂敷の中身の、あまりの空っぽさに怒りすら覚える。センターラインがしっかりしているんだから、別にこんな小手先の細工はいらないだろう。いや、元々は連載モノだから、「客とのつながり」を維持するための小細工だったのかもしれないが...一冊になったときに本の重みを逃がす小細工である。

さらにフラれた泣き言(フッたのかもしれないが)をスーパーサブとして逆サイドに展開し、その泣き言がかなり比重重くなるのも...まあ、仕方ないんだけど、女々しくて、そんなにねーちゃん(人気)欲しいのか、モテんだろに...とも思ったり。

誰もが体験しなきゃならんコトを文章力がある奴が書く、それだけでいいじゃない。書けない・描けない・描かない人もいるんだよ、誰よりも表現する力があるのにさ...

いや、いい本です。ただし、母親に読ませたくない本のベスト1かもしれないな(笑)、内弁慶で母親に冷たい俺としては。

でも、ウチのオカンよ、GWに実家に帰る権利すら俺にくれない会社にいるんだよ。「どうせ仕事で呼ばれるから帰らねぇ」ってぐらい不機嫌に言わせてくれや。実家にゃ帰りたいんだ俺でもさ。いい思い出が少ない、あの寂れた町にゃ帰りたくないのも本心だけど...とリリー・フランキー以上に泣き言ばかりだな、コレ(笑)

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'06第6冊「ズッコケ中年三人組」!

メシを炊きながら、2冊目に...


「ズッコケ中年三人組」(那須正幹:ポプラ社)


全50巻、あのズッコケ三人組が中年になって帰ってきた!!

...本読みとして恥ずかしいが、俺、「ズッコケ三人組」読んだコトねぇ(笑)。とは言いつつ、なんとなく気になるので買って来た。

山賊になったり、会社を作ったり、はたまた怪盗Xを追い詰めたり...そんなズッコケ三人組、ハチベエ、ハカセ、モーちゃんもももう40歳。みなそれなりの、あまりにもそれなりの中年ライフを過ごしていたが...

序盤はちょっともの悲しい、歳を食った中年話。劇画版「オバQ」もそうだが、大活躍したキャラも中年になると身の丈にあった生活を送るものである。もう、モーちゃんこと奥田三吉などは人生の落伍者というような有様である。

しかし、あの怪盗Xが30年の時を超え復活。三人組は怪盗Xからの誘いにより...

50年かかって築き上げられたキャラクター、いや、もちろん元々がはっきりしたキャラクター設定だけども、中年になっても綺麗に動く動く。

細かい話の流れは書かないが、展開遅すぎ?という感じで丁寧に進行する話のオチは、まあ、やはり児童書からのものであり、序盤に予想がつくものだ。しかし、丁寧に描かれ繋がれたそのオチと、オチの脇で進行する話はスカされたのにとても心地良いものである。

表紙のズッコケ中年三人組のうしろのX、そして、とても微妙に描かれた雲。30年たっても同じくらいの立ち位置で三人組とXは戦うのだ。いい人だなぁ...怪盗X(笑)

表紙裏に並ぶ全50冊の表紙。なんとなく大人買いしたい気にもなるのであった。多分そこには素晴らしい様式美が存在しているに違いない。

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'06第5冊「図書館戦争」!

なぜか気合を入れて活字を読む必要があるな~と思った今週末。しかし、どうも空回り?


「図書館戦争」(有川浩:メディアワークス)


公序良俗のためのメディア良化法による武装した国家の良化委員会の暴力的な検閲から図書を守るため、地方行政機関である図書館も武装。晴れて図書館防衛員となった女性、笠原郁の戦いと恋愛の日々を...

というコトで、設定は突飛だけど、面白いモノ。まあ、マルチメディア展開でヒットしたR.O.Dの「特殊能力を持つ大英図書館のエージェントが本好きの魂に燃えて図書を守る」設定を微妙に現実的に、かつミリタリー調にしただけという印象は拭えないのだけど。

まず、個人的には文体がキライ。ミリタリー系の人が陥りやすい、「専門用語と固い言葉の羅列で現実感を作ろうとするが、非常に冗長になり、読むリズムを壊す」書き方なのである。いや、この人は会話のリズムのとり方なんかは逆に軽いし、その部分については非常に読みやすいのだけど、硬軟のギャップが投げっぱなしなので余計に固さによる冗長が目立つのかも。

圧縮文化を旗柱に掲げる俺には合わないのよ。

で、専門用語で現実感を作ろうとしているけど、いざ戦闘シーンになると脳内で動かないし、全然頭に残らない...

理由は2つ。まず「基本的には銃器を使っても相手の被害を防ぐ、なれあいの武力衝突である。」コト。まあ、国家公務員と地方公務員が撃ち合うという設定のムリさを、なんとか抑えてたけど、一番肝心なトコで破綻したという感じである。危機感が薄いとそりゃ戦闘の現実感も薄れるよな。

そして2つ目はコレだけ説明文の多い冗長な話なのに、戦闘している場所の現況説明がすっぱりはしょられているコト。普通はこういう戦闘シーン描くなら、全体的な建物の構成くらいは描くか、あるいは(作者にその能力が希薄なときは)概図をつけるんだけど、そ~いう配慮は全く無い。

そのため戦闘の部分部分の細かさが現実感につながらない。イチ隊員がわからないまま戦場に放り込まれている状況を体感させる...ようなモノではないので、これは明らかにダメだよね。

構成としては「検閲」との言論による戦いを描いた4章が非常に邪魔。これをとっぱらって最終章にもっと注力したほうが話の展開としては良くないか?

4章の話はとても大切なのだけど、すさまじく冗長で、図書館側の一方的な言論を子供にからめて押し進める姿はカッコワルく、図書館側の正義が薄れた。

この章からは「図書館側全滅しないかな~退屈ななれあい戦闘を相手が放棄しないかなぁ~そのほうがオモシロいよなぁと思ったものである、ヒドイ奴だし俺。でも、最後の報道女の一方的なリポートなんかとてもイタくて、こいつも含めてやっぱり全滅って思うよな。

メディア良化との戦いならば永井豪の「ハレンチ学園」の凄惨なラストを超えるぐらいのものが欲しかったのもまた事実。リアルでも戦っていたハレンチ戦争を超えるのは無理だけどねぇ...まあ、アレは豪チャンだし。

一方的といや、序盤に主人公が新聞報道に怒っているのにねぇ。まあ、金がないといっていたのに最後は莫大な資金力を使ったりで整合性がとれてない目立つトコも多いし。

主人公の微妙にヘンな恋愛のオチも、「ありがちで読者にバレバレなのは解っているから、あえて恋愛ストーリーには絡めないよ」という描き方で、それもちょっと寂しい。

なんかダメダメばかり綴ったが、良い点はキャラクターがしっかりと立っているコト。特に主人公の友人の柴崎のキャラの立て方と使い方はとても良い。恋愛オチを柴崎が語る形ならばもっと良くなったかもなぁ。あと、話にゃ関係ないが装丁イラストは装丁イラストとしてとても良い。

...マンガ版「R.O.D」の山田秋太郎の手による読子リードマンの絵は絶品の域であるが。

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'06第1冊「本棚探偵の冒険」!

あいも変らず月5~6万ペースの本代は変らず。(ほとんど雑誌だけど)

「本棚探偵の冒険」(喜国雅彦・双葉文庫)

ルーチン本も、スーパーサブ雑誌(ルーチン本の読みが早いときだけ買う雑誌)も読みきった今月。ウロウロしていたら喜国の名前が目に入って手に取った一冊。

「傷だらけの天使たち」とか「まんが王」「まんが大王」と、ヤングサンデー黄金期を支えたエロバカ4コマはもちろん持っているのでだが、喜国の文庫本とはコレいかに?

いきなり喜国夫妻(ヨメはこれもマンカ家の国樹由香)とミステリ作家の山口氏、言わずと知れた手袋好きの「ミステリ」作家の某氏(名前を出すまでもない)が、本読みには有名な「江戸川乱歩の蔵」に行くところから始まる、フェチ小説...ではなくて、古本ヲタの暮らしの手帳であった。

キクニといえば、金髪のロック好きで網タイツはいた奥さんに踏まれながらエロバカ4コマor純文フェチ漫画を描く人と思っていたが、最近はミステリ初版本を中心とした古本ヲタになっていたのであった。(風貌は変らないか)

その喜国が古本のため彷徨いつつ、本棚を作り、本の函を作り、豆本を作り、ヲタ仲間を作る日々。ココ最近では非常に時間をかけて読むコトになる濃密で、重厚な1冊であった。

どちらかとゆ~とミステリを避けている人間で、乱歩とか小~中学んトキにチラと読んだ程度ではあるが、別にこの本はミステリとゆ~よりは「古本」の本なので、本屋の並べ方に文句をつけるような本好きにはかなりオモシロいのである。(「小説推理」に連載していたのに。)

一番面白かったのは鉄腕DASHに感化されて1日で「ハヤカワ・ポケットミステリー」の約16000冊を何冊見つけられるか...という自発イベントもので、最後のキレの良さが「作っているかぁ?」と思えるくらいのデキである。全体に専門用語は多いが(まぁ、本読みなら困るまい)非常に読みやすく、うまい文章なのだ...ちょっとビックリ。

まあ、ある種「こうはなるまい」という本でもあるが、非常に多彩なエピソードがそれぞれ良いので、本屋を荒らしている人々はぜひ読むべし。喜国が映画化もされた「月光の囁き」のような純文学(なフェチ)漫画を描く力があるのも良くわかる...でもやはり奥さんに踏まれながらエロバカを...

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小休止「クライマーズ・ハイ」!

4コマ祭りの小休止に小説のレビューというのはマンガの上に文学があると思っている人には怒られるのかもな~と思いつつ、いや、小休止ってワケでもないですから。


「クライマーズ・ハイ」(横山秀夫:文芸春秋)

御巣鷹山での日航機事故での事故の際、現場の地方紙がどう動いたのか...を「その場にいた」元地方新聞記者である作者が描いた小説である。

ドキュメントと思って表紙買いしてしまったんだけど、中身のリアリティは素晴らしい。御巣鷹山のあの事故をベースに、たまたまとんでもない歴史的な大事件が地元に降り注いでしまった新聞社の記者達、そして商売としての新聞を維持しようとする上層部、その間に板ばさみになりつつも新聞屋として戦う、この事故専属デスクとなった主人公...クドいほど濃密な話を、その日行われるはずだった、そしてその後に行った登山とともに描いているのである。

このへん新聞社の友人から得た自分のストックに非常に近く、ホントにリアルに読める。

主人公はこの本の最大のヤマ場で、読者が最大の期待をしたトコで、むざむざとその期待を裏切る。ここまで読者の期待を裏切る主人公はそうそういないであろう。また、それ以外の部分でも負け話は多い。まあ、ほとんどが新聞社という組織との戦いのため「しょうがない」負け戦であるが...

作者は最後にもう1つのヤマ場を作り、そこでの戦いで話を纏め、読者を納得させようとするが、そのエピソードの骨の部分が「いかにも真っ直ぐで世間知らずな新聞記者さん」的な意見で、それまでの負け戦を納得させる力がないラストになっている。

その骨は「命の大小」。登山と共にこの話のサイドストーリーとなっている部分から強引にもってきたその話は人の命と記事のサイズとの比較である。新聞という商業媒体で人の命を扱うこと、扱っていたことへの作者の声なのだろうが...

例題とした2つの事故の記事に差が真にあるのか?身内を失ったのは2つの事故の人だけなのか?結局は主人公のエゴとしてお茶を濁しているけども...

この本の刊行の数年前に爆笑問題が「爆笑問題の死のサイズ」として50年間の著名人の「死亡新聞記事のサイズを比べた」作品を刊行していたりもする(ウチにもある)。もっとストレートに「そのまま」の描き方で。新聞を斜めから読む(読める)人は増えているし、それが真に斜めとも限らない。

職場と家族を扱った良い小説であるが、主人公の新聞社名以外を実名にして、「御巣鷹山」、「日航機」、「共同・朝日」など書き綴るほどの必要があったのか(まあ、沈まぬ太陽もそんなトコあるけど、あれのような濃厚な取材からくる「現場」を描かないですませている、まあ、描けない理由も話の核ではあるけども)。それこそ「命の大小」についての作者の考えが問われそな気がする。年数たったから...とかで刊行したのは言い訳だし、ぼかすなら全部ぼかしても手にとらせ、読ませる力量がいる作品にも思える。逆ならドキュメントで出したほう...は無理だったんだろけど。ズルいけど、商業的には...って話の中身は大部分、真っ直ぐ=正義なのにね。

そして、「なぜか」、NHKが実名交じりでドラマ化とのコト。民間の新聞社だからこその販売と記者のせめぎあいがNHKに描けるの?、実名使って「スポンサーに左右される民間報道」ってのを暗に大きく描きたいんじゃないの??など思うことは色々あり。まあ、大手新聞社の資本下にある民放だとかたよるかもしれないけど、でもねぇ...まあ、どうせ見ないし、コレは本の評価ではない。

作者には出す必要があった小説だろうし、そんなに悪い話でもない。むしろ90分で読ませるんだから良い本ではある。が、正直、本の厚さと取り扱った事件に対して、薄い中身のように思える。主人公は新聞記者のある種、理想の生活をその後過ごし、作者は逆の理想に「下った」。全ての、真に骨とした結論は「なあなあ」で終わったのだ。それもありだが、山のシーンのラストの爽快感は埋没する。

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